自社ECサイトを運営していても、「カートに商品が入ったのに購入されない」「決済手段を増やしたいがコストに見合うかわからない」と悩む担当者は少なくありません。集客に力を入れても、購入直前で顧客が離脱してしまえば売上は伸びないものです。
その解決策の一つがAmazon Pay(アマゾンペイ)です。既存のAmazonアカウントを使って決済できるこのサービスは、購入のハードルを下げ、カート放棄を防ぐ効果があります。ただし、越境ECを検討している場合は仕組みを正しく理解していないと「海外の顧客が利用できない」などの問題が起こりかねません。
この記事では、越境ECやECマーケティングの専門家の視点から、Amazon Payの仕組み、導入メリットとデメリット、手数料、海外対応の実情までをわかりやすく整理しました。読み終える頃には、自社にAmazon Payが必要かどうかを的確に判断できるようになります。
Amazon Payとは?仕組みとEC事業者が注目すべき理由
Amazon Payは、Amazonアカウントに登録された住所とクレジットカード情報を使って、他のECサイトでも決済できる仕組みを提供するサービスです。新たな登録や情報入力が不要な「ID決済」として、スムーズな購入体験を実現します。
Amazonアカウント一つで完結する「ID決済」
ユーザーはAmazonにログインするだけで、登録済みの情報が自動で反映されます。住所やカード情報を改めて入力する必要がなく、購入完了までの流れが大幅に短縮されます。この利便性が、離脱を防ぐ大きな要因となっています。
圧倒的な利用者基盤がもたらす安心感
日本では多くのユーザーがAmazonアカウントを保有しています。初めてのECサイトでも、Amazon Payなら「信頼できる」と感じて購入に進むユーザーは少なくありません。中小規模のECサイトでも、このブランド信頼を活かせるのが大きな利点です。
「入力の手間」を極限まで減らす設計
スマートフォンでのショッピングでは入力負担が離脱要因になります。Amazon Payを利用すれば、最短2クリックで注文を完了でき、モバイルユーザーの利便性を高めます。
Amazon Payを導入する3つの大きなメリット

1. コンバージョン率(CVR)の劇的な改善
入力の手間を削減することで、購入意欲が高い瞬間にスムーズな決済を実現。会員登録をせずにAmazonアカウントで購入できるため、機会損失を減らしコンバージョンが向上します。
2. 新規会員獲得のハードルを下げる
Amazon Payで決済する際に、自社会員登録を同時に行う設定も可能です。入力を省略して会員化できるため、リピーター施策につながりやすくなります。
3. Amazonギフトカードが利用可能になる
Amazonアカウントに登録されたギフトカード残高で支払いができるのも特徴です。現金支出なしで購入でき、購買意欲を刺激する効果があります。
導入前に知っておくべきデメリットと注意点
決済手数料が比較的高め
Amazon Payの手数料は物販3.9%、デジタルコンテンツ4.5%と一般的なクレジットカード決済より高めです。CVRの上昇で十分にカバーできるか、利益率を踏まえて検討する必要があります。
自社ブランドの印象が薄れるリスク
「Amazonで買った」という印象が強く残るため、自社ブランドの記憶が薄くなる可能性があります。サンクスメールや梱包デザインでブランドを印象づけましょう。
入金サイクルの確認
入金スケジュールはAmazonの規定に基づくため、資金繰りがシビアな事業者は事前に確認しておくことが重要です。
Amazon Payの手数料とコスト構造
初期費用・月額費用は無料
初期・月額・振込手数料は0円です。発生するのは決済が行われたときのみ。無駄なランニングコストがない点が魅力です。
手数料率の内訳
- 物販:3.9%
- デジタルコンテンツ・サービス:4.5%
利用カートシステムによっては別途オプション費用が発生する場合もあるため、事前に確認が必要です。
カゴ落ち対策としてのAmazon Pay:CVR向上の理由
登録作業の煩雑さを解消
多くのユーザーが購入直前に離脱する理由は「入力の面倒さ」です。Amazon Payはその障壁を取り除き、スムーズな購入体験を実現します。
モバイル購入に最適
スマホでの決済に最適化され、ログイン後は数タップで完了。特にモバイル中心のECサイトでは導入効果が大きいです。
セキュリティ面での安心感
カード情報はAmazonが管理し、ショップ側に渡りません。顧客は安心して購入でき、信頼感が離脱防止につながります。
越境ECにおけるAmazon Payの実情

「日本のAmazon Payは海外でも使える」は誤解
日本版Amazon Payを利用できるのは、Amazon.co.jpのアカウントを持つユーザーのみです。海外版アカウントでは日本のECサイトで決済できません。
有効となるケース
- 海外在住の日本人
- Amazon.co.jpを利用した経験がある外国人
一方、一般的な海外ユーザー向けにはPayPalやStripeなどの導入が適しています。
Shopifyなどカートシステムとの連携
Shopifyでの導入は簡単
ShopifyはAmazon Pay公式パートナーであり、管理画面から数ステップで設定可能です。専門知識がなくても導入できます。
Shop Payとの共存
AmazonユーザーとShopify経済圏のユーザーを両方取り込むために、Amazon PayとShop Payを併用するのが理想的です。
受注管理の一元化
Amazon Payでの注文も通常の決済と同様にカートシステム上で一括管理でき、運用負荷が増えることはありません。
導入手順と審査
- Amazon Pay公式サイトから加盟店アカウントを申請
- 必要書類(登記簿謄本・身分証など)を提出し審査を受ける
- カートシステムに発行されたIDを登録
- テスト決済を行い、本番公開
審査には数日〜2週間ほどかかるため、時間に余裕を持って準備しましょう。
よくあるトラブルと対処法
決済ができない場合
アプリ内ブラウザでのログイン連携不良やカード情報の期限切れが原因です。SafariやChromeで再試行するよう案内します。
住所情報の不一致
登録住所が古い場合、配送トラブルが起きやすくなります。注文確認メールで住所確認を促す対応が有効です。
チャージバックへの備え
不正防止システムが稼働していますが、万が一の際はAmazonの保護プログラムを活用できます。規約確認を怠らないようにしましょう。
まとめ:Amazon PayでECの購入体験を強化
Amazon Payは、カゴ落ち防止と顧客体験向上を同時に実現する有力な決済手段です。スマホ利用比率が高い、自社会員登録率を上げたい、といった課題を抱えるEC事業者に特に適しています。
手数料はやや高めでも、失っていた購入機会を取り戻せる可能性があります。まずはカートシステムの対応状況を確認し、導入を検討してみてください。
Amazon Payに関するよくある質問
- Q1. 個人事業主でも導入できますか?
- はい。開業届など必要書類を提出すれば導入可能です。ただし、扱う商材によっては審査が通らない場合もあります。
- Q2. Amazonポイントは貯まりますか?
- ギフトカード利用分など特定条件で付与される場合がありますが、Amazon内購入のように一律ではありません。
- Q3. 審査期間はどのくらいですか?
- 申請から通常は数日〜2週間ほどです。不備があると時間が延びるため、特商法表記などを事前に整えましょう。
- Q4. 越境ECサイトでは必須ですか?
- 必須ではありません。海外アカウントは日本のAmazon Payを利用できないため、PayPalやStripeの導入が推奨されます。
- Q5. 返金処理はどう行いますか?
- Amazon Pay管理画面から該当注文を選択し、全額または一部返金を実行します。処理はAmazonを通じてカード会社に反映されます。



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